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俺たちは男の子の住む街までやってきた。
もう少しで男の子の家だ。 その時、一匹のオオカミが現れた。 「おまえがアリの依頼を引き受けたカブトムシだな。悪いが邪魔させてもらおう」 そう言ったやつの口からは鋭い牙が生え、歯茎がむき出しになっていた。 「えっ、ていうかなんで?なんで邪魔するの?俺とあんたって初対面だよね」 そこにウサギが現れた。 「ふふふ、あたしがこいつに頼んだからよ」 「いや、俺あんたのことも知らねーし」 何がどうなってるんだ。 俺が混乱していると、セミたちが言った。 「兄貴。ここは俺たちにまかせてください」 「兄貴は女の子を連れて先に行ってください」 くぅー、泣かせるじゃねーか。俺はいい兄弟分を持ったぜ。 「いいや、そういうわけにはいかねぇ。仮にも俺はムシの王者だ。俺にまかせておけ」 そう言うと俺はオオカミの前に立ちはだかった。 とは言っても。 俺カブトムシだぜ?ムシだぜムシ。どう考えてもオオカミにかなうわけないじゃん。大きさ全然違うし。あいつの足で踏み潰されたらそれで終わりじゃん。 くそぅ、大見得切ったはいいが、はっきりいってかなりピンチだぜ。 「お前に恨みはないが、ポークビッツの借りだ」 オオカミはそう言うと、俺に向かって突進してきた。 速ぇ。よけきれねえ。 せっかくカブトムシに生まれてラッキーと思ってたのに、これじゃ七日の命どころか一日で終わりじゃねーか。 はかない人生だったぜ・・・。 俺は目をつぶった。 その時、ギャン!と声をあげて、オオカミが横にふっとんだ。 なんだ?なにが起こったんだ? 恐る恐る目を開けると、そこには一人のばあさんが立っていた。 「あっ、ばばあ!なんでこんなところに!」 ウサギが驚愕の表情で叫んでいる。 「ウサ美ぃ!!あんた、また台所から食材をくすねたね!!」 ばあさんが鬼のような形相で怒鳴った。 「あんたも共犯かい!この泥棒オオカミが!」 そう言ってばあさんはもう一度オオカミの腹に蹴りを入れた。 「キャイン」と泣きながら、オオカミは森の方へ逃げていった。 「今日という今日は許さないからね。このメスウサギ!」 ばあさんはウサギの首根っこをつかんで去っていった。 「な、なんだったんだ・・・」 残された俺たちはポカンとした表情でしばらく立ち尽くした。 |