vol.5

俺たちは男の子の住む街までやってきた。

もう少しで男の子の家だ。

その時、一匹のオオカミが現れた。

「おまえがアリの依頼を引き受けたカブトムシだな。悪いが邪魔させてもらおう」

そう言ったやつの口からは鋭い牙が生え、歯茎がむき出しになっていた。

「えっ、ていうかなんで?なんで邪魔するの?俺とあんたって初対面だよね」

そこにウサギが現れた。

「ふふふ、あたしがこいつに頼んだからよ」

「いや、俺あんたのことも知らねーし」

何がどうなってるんだ。

俺が混乱していると、セミたちが言った。

「兄貴。ここは俺たちにまかせてください」

「兄貴は女の子を連れて先に行ってください」

くぅー、泣かせるじゃねーか。俺はいい兄弟分を持ったぜ。

「いいや、そういうわけにはいかねぇ。仮にも俺はムシの王者だ。俺にまかせておけ」

そう言うと俺はオオカミの前に立ちはだかった。

とは言っても。

俺カブトムシだぜ?ムシだぜムシ。どう考えてもオオカミにかなうわけないじゃん。大きさ全然違うし。あいつの足で踏み潰されたらそれで終わりじゃん。

くそぅ、大見得切ったはいいが、はっきりいってかなりピンチだぜ。

「お前に恨みはないが、ポークビッツの借りだ」

オオカミはそう言うと、俺に向かって突進してきた。

速ぇ。よけきれねえ。

せっかくカブトムシに生まれてラッキーと思ってたのに、これじゃ七日の命どころか一日で終わりじゃねーか。

はかない人生だったぜ・・・。

俺は目をつぶった。

その時、ギャン!と声をあげて、オオカミが横にふっとんだ。

なんだ?なにが起こったんだ?

恐る恐る目を開けると、そこには一人のばあさんが立っていた。

「あっ、ばばあ!なんでこんなところに!」

ウサギが驚愕の表情で叫んでいる。

「ウサ美ぃ!!あんた、また台所から食材をくすねたね!!」

ばあさんが鬼のような形相で怒鳴った。

「あんたも共犯かい!この泥棒オオカミが!」

そう言ってばあさんはもう一度オオカミの腹に蹴りを入れた。

「キャイン」と泣きながら、オオカミは森の方へ逃げていった。

「今日という今日は許さないからね。このメスウサギ!」

ばあさんはウサギの首根っこをつかんで去っていった。

「な、なんだったんだ・・・」

残された俺たちはポカンとした表情でしばらく立ち尽くした。