vol.4

俺は、女の子の家に行くべく隣町を目指した。

しかし、その道のりは容易ではなかった。

「あ、カブトムシだ!」

「つかまえろ〜」

通る子供みんなが俺を虫取り網で捕まえようとする。

どうも最近は子供たちの間でカブトムシが人気らしい。

「このカブトムシすげぇでけーじゃん。捕まえたら高く売れるぜ!!」

などと抜かしている子供もいる。

おい、子供ならもっと子供らしい発想を持て。

どうにかこうにか子供たちの追撃をかわし、俺はアリから手渡された住所の家に辿りづいた。

ブゥゥン、とインターホンに飛びのってチャイムを鳴らす。

「ピンポーン」

「はーい」

ガチャ、と扉が開き、中から女の子がでてきた。この子だな。

「あら?誰もいないわ。いたずらかしら」

いたずらじゃない、俺だ。

俺は、インターホンから玄関に飛び降りた。

やあ、お嬢さん、はじめまして。あんたにちょっと来てもらいたいんだ。

「あら、カブトムシだわ。こんなところでめずらしいわね。誰かが飼っていたのが逃げ出したのかしら」

な、なんてこった。

言葉が通じてない。

おーい。俺はあんたに用事があって来たんだよ。

「・・・だとしたら、飼い主をさがして届けてあげなきゃ」

う。これはまずい展開になってきたぞ。

女の子はしゃがんで俺をつかもうとした。

うわっ。

とっさに飛んでよける。

「うーん、なかなか捕まえられないわ」

いや、むしろ捕まえられたら困ります。

これはどうにかしないとヤバイぞ。

ヘルプミーだ。

そのとき、ブゥゥン、という大量のムシの羽音が聞こえてきた。

「きゃあ、何よこれ!」

女の子が叫ぶ。

それは、セミの大群だった。

「へい兄貴!」

「助けにきたぜ!」

それは、幼虫時代、共に地中で暮らしたセミたちだった。

「おお、兄弟よ。みんな立派になったなあ」

計らずも、懐かしくて涙がでてきちまったぜ。

「オイラたちにまかせなよ!」

そう言ってセミたちはブンブンと羽音をたてながら、女の子の家の中に入って行くと、奥から真っ白なシーツを持って飛んできた。

そして、女の子をシーツに載せると、力の限り羽ばたいた。

「きゃあ!なに?なんなのよこのセミの大群は。気持ち悪い!気持ち悪いわ!!」

パニック状態の女の子もおかまいなしに、セミたちは目的地へ向かって飛び始めた。

「すげぇ。セミもあなどれないぜ」

そうつぶやいて、俺も後に続いた。