vol.2

一方その頃―

あたしはウサ美。

人間の男の子に飼われてるウサギなの。

「ほら、ウサ美。えさだよ」

まあ、またにんじんなんかよこして。

わたしはそんなもの食べないっていつも言ってるでしょ?

「またお菓子のほうがいいのかい?おまえは、ウサギのくせにほんと変わってるなあ」

ご主人様はあたしをとてもかわいがってくれるの。

今日も、あたしのために自分のおやつを半分もわけてくれるんだもの。

「ミカちゃんがいなくなって、もう一ヶ月かぁ・・・」

んまあ、ご主人様ったら、またあの女のことを考えてるわ!

あの女ったら、いつもご主人さまに色目使って、やっとどこかに引っ越してくれてせいせいしてるっていうのに。

「おや、まあ、おまえったら、またウサ美にお菓子をやったのかい。ちゃんと野菜を食べさせなきゃいけないっていつもいってるだろう?」

あーあ、うるさいばばあがやってきたわ。

「そんなこと言っても、おばあちゃん。ウサ美のやつ、お菓子しか食べないんだもん」

「そこをなんとかするのが飼い主であるおまえの責任だろうが。明日からはちゃんと野菜をたべさせるんだよ」

「わかってるよ、おばあちゃん」

ご主人様は、いつものようにあたしをひょいとだっこして庭へ出て、お菓子をほおばりながら日向ぼっこを始めた。

ほんっと、いちいちうるさいばばあよね。

あたしが何を食べようがあたしの勝手じゃないの。

しばらくして、アリがやってきた。

「やあ、ウサ美さん、こんにちわ」

「あら、また来たの」

「いつも君のご主人様にはお世話になってます。あんな極上のお菓子をいただいて」

「誰もお世話なんかしてないわよ。あんたが勝手にご主人様の食べこぼしを拾って持ってってるだけでしょ?用が済んだらさっさと帰ってよね」

まったく。せっかくご主人様と二人っきりでいられるのに、邪魔されちゃたまったもんじゃないわ。

「まあ、そう言わず、話を聞いてくださいよ。実は、あなたのご主人様に恩返しをしようと思ってるんですよ」

「恩返し?」

「ええ。君のご主人様、最近近所に住んでいた女の子が引っ越して、とても寂しがっているでしょう?でもなんと。僕が彼女の住んでいる家を見つけたんです よ。偶然にも。いやぁ、日頃の行いがいいからですかねー。何せ、毎日毎日あくせく働いてますから・・・おおっと、僕の話はどうでもいいや。とにかくそうい うことでですね。僕は仕事があるので、代わりに友達に女の子をここへ連れてきてもらえるように頼んだんですよ」

な、な、な、なんですってー?!!!

なんてことしてくれんのよ、このスットコドッコイのもやしアリが!!

せっかく邪魔者がいなくなったっていうのに、なんだってそんな余計なことするのよ。いいえ、絶対にそんなことさせるもんですか!

落ち着いて、落ち着くのよ、ウサ美。

ここは平静を装って、誰がそんな役目を引き受けたのか聞き出すのよ。

「へぇ〜。それはそれは。それで、その友達って?あんた、友達なんていたかしら」

「カブトムシさんですよ。森で仲良くなったんです。彼なら、ムシの中の王者だし、きっと僕の頼みを聞き届けてくれるでしょう」

このアリはほんっと人がいいわね。何の疑いもなくあっさり教えてくれたわ。あたしが邪魔してやろうなんて思ってることは微塵も考えてないんだわ。馬鹿は扱いやすいわね。

さて、こうしちゃいられないわ。

「そう、それじゃ、あたし用事ができたから」

「おや、そうですか。じゃあ僕もそろそろ仕事に戻ります・・・って、あれ、もういない」

あたしは一直線に森へ駆け出した。

何がムシの王者よ。だったらこっちは動物の王者を使ってやるわ。