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俺はセミの幼虫。
仲間と共に土の中で暮らしている。 成虫になれば、7日の命。はかないもんだぜ・・・。 ところがある日。 地上に出て脱皮してみれば、俺はカブトムシの姿になっていた。 なんだよ、周りの奴らが全員セミだから、てっきり俺もセミになるもんだとばかり思ってたぜ。 ま、仕方ねーよな。地中には鏡はねーしな。間違えたのも必然ってやつよ。 それはそうと、思ってたより寿命も長いし、けっこう虫のなかではキングって呼ばれるくらい強い虫だし、なんだかラッキーだったな。 とりあえず木の幹で樹液を吸っていると、アリの奴がやってきた。 あいつは、俺が地上にでたときに真っ先に声をかけてくれて、森で生きていくあれこれを教えてくれた、いわゆるマブダチってやつだ。 「やあ、カブトムシくん」 「おう、なんだいアリくんよ」 「実は君にちょっと頼みがあるんだ」 「おうおう、なんでも言ってくれよ」 「あのね、僕の仲良くしてる男の子がいるんだけど、その子、最近近所に住んでた仲のいい女の子が引っ越してしまって、とてもさびしがっているんだ。ところが、僕が仕事でえさを探している途中、偶然隣街にその子が住んでるのを見つけたんだよね」 「ふむふむ」 「それでね、僕の代わりに、その女の子を男の子のところへ連れて行ってほしいんだ。なにせ僕は働きアリだし、持ち場を離れるわけには行かないんだよね」 「そうか。そういうことならよしきた。おめぇさんには借りもあるしな」 「ありがとう!じゃあ、はい、これがその女の子の住所だよ」 そういうわけで、俺はアリの頼みごとを引き受けることになった。 |